法人とは


 一定の目的により結合した人の集団または独立の目的財産で、法律により権利義務の主体とされるもの。
 法人の体質をどうみるかについては、学説上の争いがある。すなわち、法人擬制説(権利の主体となり得るのは自然人に限るべきであり、法人は法律が特に自然人に擬制したものであるとする)、法人否認説(法人は個人または財産のほかに特にその実体とすべきものをもたないとする)があるが、通説は法人実在説(法人は一つの社会的実在であるとする)の立場をとる。
 法人の種類には、公法人(国・地方公共団体や各種の公団・公庫・事業団など)、私法人(会社や学校法人・宗教法人など)があり、私法人は社団法人(一定の目的のもとに結合した人の集団による法人)と財団法人(一定の目的に提供された財産を基礎として設立された法人)に分類される。
 また、法人を公益法人(祭祀・宗教・慈善・学術・技芸その他の公益を目的とし、営利を目的としない法人)と、営利法人(構成員の利益分配を本来の目的とした利益追求の法人)に分類することができる。
 法人が活動するためには、その意思を決定し、これを実行する任務を担当する者が必要である(たとえば、株式会社であれば株主総会・取締役会・代表取締役など)。
 法人は性質に基づく制限(自然人のような男女の性・年齢・身体などを前提とする権利義務はもたない)のほかは、法人の目的の範囲において権利能力(権利および義務の主体となることのできる法律上の資格あるいは地位。たとえば、財産権を取得し、処分できる資格が法律上保護される。この権利能力を認められるのは自然人と法人に限られる)をもち、代表機関が法人の目的の範囲内で行った行為は法人の行為となる。
 また、法人の機関がその職務を行うに際して他人に損害を与えた場合には、法人がその賠償責任を負うことになる。



合名会社


 会社の債務について、社員の全員が会社債権者に対して、直接に連帯して無制限の責任を負う会社である。資本的結合よりも人的結合の面が強く現われ、社員の個性が会社に強く反映した人的会社の典型である。
 社員(ここでいう社員は会社構成員の意味で、一般に従業員の意味で用いる社員とは異なる)となろうとする者二人以上が、定款を作り、設立登記をすることにより会社が成立する。相互に信頼できる社員の集まりであり、社員が債権者に対し直接に連帯して、無制限の責任を負うので、商法は株式会社におけるような複雑で、しかも厳格な設立手続きを定めていない。
 社員は利益配当請求権をもち、その反面、損失を分担する義務を負う。会社財産によって債務が完済できない場合、または会社財産に対する強制執行がうまくいかなかった場合には、社員は連帯して弁済しなければならない。
 このように社員の責任が大きいので、各社員は、定款または総社員の同意で別段の定めをしない限り、当然に会社の業務執行および代表権をもつ。定款により会社の業務執行から外された社員も、会社の業務および財産の状況を検査する権利をもつ。



合資会社


 無限責任社員と有限責任社員とで構成される会社。
 無限責任社員は、合名会社の社員と同じく、会社の債務について会社債権者に対し、直接に連帯して無制限の責任を負う。そのかわり、会社の業務執行権や代表権をもつ。
 有限責任社員は、会社債務について会社債権者に対し、連帯して直接責任を負うが、それは財産出資の価額を限度とする有限責任である。これに対応して、会社の業務執行権や代表権はなく、監視権をもつにすぎない。
 設立手続きは、合名会社とほぼ同様であるが、無限責任社員のほか有限責任社員が存在する点で、定款の記載事項や登記事項が違っている。